Alumina 酸化アルミニウム
このレメディは Alumenの後に非常にうまい具合にやって来る。 AlumenはAluminaの特質を非常に多く含み、作用の多くの基本的な部分をAluminaに依存し、その事が私に小さなヒントを投げかけてくれた。酸化物か炭酸塩の良い物質的プルービングがあり、精神面の症状がうまく明らかにされた場合、その物質と同じ物質を基盤とする他の塩で、プルービングで精神症状が少ししか明らかにならなかった物質の処方において いくらか推定的な方法でそのプルービングを利用する事ができる。たとえば、明らかにAlumenに関する一群の症状がある。しかしながらAlumenの精神面の症状は限定的にしか明らかになっていない。けれど酸化物であるAlumenの基本的な精神症状があり、患者にAluminaの精神面の症状とAlumenの身体面の症状があれば、AlumenもAluminaもアルミニウムなので、Alumenで治癒する事が合理的に推定できる。
我々はAluminaの精神面の症状をかなりよく知っている。Aluminaは特に知性を支配し、知力を非常に混乱させるので患者は決定する事ができない;判断力が妨げられる。はっきり理解する事ができない;自分が知っている事や分かっている事が本当でないように見えたり、それがそうなのか、そうでないのかを疑う。「ガイディング・シンプトン」には、それほどはっきり表現されていないが、「慢性病論」には、それがどこででも起きる事を最も表現している記録がある。読んでみよう;「何かを言うと、まるで他人が話したように思い、何かを見たら、他人が見たように思ったり、他のものに乗り移れた時だけ分かるようである」すなわち知性の混乱、考えや思考の混乱がある。Aluminaはこのような症状を治癒してきた。人格的同一性(パーソナルアイデンティティ)が混乱している。自分が誰なのかはっきりわからない;まるで自分ではないように思える。知性がぼっとした状態である。書き間違いや話し間違いをし、意図しない言葉を使う;間違った言葉を使う。 知力の混乱や不明瞭さ。思考のつながりについて行けない。
そして別の段階に入り、急ぐようになる。何も十分に速く動かない;時間がゆっくりすぎるように見える ;すべてが遅れ、何もうまく行かない。これに加え衝動がある。鋭い物や道具や血を見ると、内面で衝動がわき上がり、この衝動のため身震いをする。殺人や殺傷のため使える道具でこの衝動が喚起される;自殺の衝動。
Alumina の患者は非常に悲しく、常に悲しんでいる。絶え間なく嘆き、うめき、心配し、イライラし急ぐ。逃げたい;この場から離れたい;もっといい事があるのではと望みを持ち、今いる場所から逃げ出したい;恐怖で一杯。あらゆる想像。全般的な懸念。患者がこの心の状態を沈思すると、理性を失うように思う。この様な心の狂乱(乱心)や、心の焦りや混乱、自分の名前さえほとんど分からなくなる事や いかに自分が怒りっぽいかについて考え、気がおかしくなるのではと思い、最終的に本当に気がおかしくなると思う。
ほとんどの精神面の症状は、朝起きがけに来る。朝起きがけに、悲しみ泣く。気分は交互に変わる。精神状態が少しよくなり、気分が静かで穏やかな状態になり、再び恐怖と懸念に入る。何か悪魔が陣取ろうとし、 不安で一杯になる。将来についての不安である。
次の大きな特徴は、背骨から発する神経に働く事にある。背骨から来る神経によりもたらされる筋肉の衰弱した状態がある;全身の衰弱。呑み込む事が困難で、食道が麻痺状態;腕を上げたり動かしたりするのが難しい;体の片側の麻痺、または下半身の筋肉の麻痺、膀胱と直腸の麻痺。麻痺状態は半麻痺のようなもので始まり、単に活動が鈍い状態が長く続き、ついには完全麻痺状態となる。
すべてが緩慢。神経の伝導性は損なわれ、そのため体に刺さったピンの痛みを1秒後か、1秒以上すぎるまで感じられない。 この様にして全ての感覚が損なわれ、ついに感覚が麻痺し、思考力(知力)が麻痺し、精神的に不活発になったように見える。緩慢さの度合いが顕著になりながら、印象が知性に到達する。
麻痺状態はAluminaを貫き、多様にさまざまな部分に見られる。膀胱は尿を放出するのにゆっくり動く。女性は尿が出始めるまで長い時間座って待ち、 押し出す事もできず、ゆっくりと尿が出る。急いで 放尿できないと患者は言うだろう。尿はゆっくり出始め、ゆっくり流れ、ポトポト漏れるだけの時もある。 尿を我慢すると 知らないうちに漏れる事もある。この緩慢さは直腸にも見られる。直腸は活動性を失い、便を出そうと普通に気張る事ができないし、また直腸は不全麻痺のひどさで詰まって膨満感があり、便が大量で柔らかいが、便秘になる。Aluminaでは硬い便はよくあるが、Aluminaは軟便を伴う直腸不全に最もよく作用する。前述のような精神的な症状があり、大きく固く結び目の多い、或いはコロコロ塊りの多い便を伴う場合、Aluminaが治癒する。 さて、柔らかい便を非常に力んで出すので、患者が次のように表現するのを聞く事があるだろう;便がたくさんある感じがするし何日も便通がないのに、便座に座ると長く待たなければならない;排便すべきだという事は分かっているし、直腸に便がたまっている事は分かっている。それなのに長く座って腹筋を使って必死に力み、意識的に便を押し出す事になるし、直腸自身による頑張りはほとんど感じられない。力み続け、汗だくになり、便座にしがみつき、しがみつける場所があればどこでもしがみつき、まるで分娩のようにがんばり、ついに柔らかい便を出すが、便がまだ残っているという感じを伴う。
もちろん柔らかい便を力んで出す他のレメディもたくさんあるが、それぞれ独特の特徴がある。例えば起きていられないという特徴がある人もいる;一行読んだら必ず眠くなると言う;いつでも眠れると言う; 日夜口の乾燥で苦しんで、 口は口蓋まで裂ける。さて、この患者に柔らかい便を力んで出す時の様子を描写してもらおう。レメディが分かるまでは さらに詳しく突き詰める必要はほとんどない。柔らかい便を力んで出す事に加え、時間に関わらず立っていると気絶する癖があり、閉め切った部屋では動揺し冷たい空気の中ではあらゆる不調が起きると言えば、Nux moschataである。個々のレメディがレメディ自身の事を話してくれるのはとても容易な事だ;レメディは自分自身のストーリーを話す。出血や長引く滲出(しんしゅつ)に苦しみ、青白く弱く、ガスで腸が膨れ、ゲップとおくびが出て、出せば出すほど悪く感じ、柔らかい便を長い間力んで出し、動かない直腸に、すさまじい努力をしている女性が来たとしよう。China.以外考えられない。レメディに自身のストーリーを話させる事でレメディの個別化が達成されるのだ。つまりレメディの決定は直腸の不活発性に依らないという事だ。個別化というものは患者を通してなされねばならない。これは決して侵されてはならない原則である。ある1つの症状を20のレメディが有するかもしれないけれど、患者について2~3のハッキリした事が得られた時に初めて 個別化できる何かが得られる事になる。患者に関する事とはつまり患者の仕事の仕方や、病気がその人全体に与える影響の仕方などである。諸君はAlumina の患者、Chinaの患者、そしてNux moschataの患者を見て来た。治療家の唯一の義務は病気を治療するという事だが、それはつまりその病気の概念が得られるまで患者自身を綿密に調べるという事だ。
Aluminaには多くの目まいがある;(小刻みに)揺れ、よろめき、ほとんどいつも「目が回っている」。Aluminaの目まいは疲れ切った人や、 衰弱した老人、年をとってよぼよぼになった老人の目まいと一致する。目を閉じても目まいがするが、これは脊髄疾患や脊髄側柱後部の硬化症に見られる目まいのようだ。Aluminaは運動失調に類似した疾患を呈する。またAluminaは足の裏のしびれや電撃のような痛み、目を閉じた時の目まい、よろめきや筋肉の動きの協調障害を起こす。運動失調の初期に、Aluminaが有機組織の内部に秩序をもたらし病気の進行を食い止める。お年寄りの不治の症例で、Aluminum metallicumによりチクチク刺すような痛みが止まり、驚くほど反射神経が向上した事がある。この症例で患者が一般的に改善する事が示されている。
ほとんどの症状が朝起きがけに悪化する。朝は、先に述べたように、動き回って少し暖かくなってから、尿がゆっくり出る。手足は朝には固く、朝は精神状態を鼓舞しなければならない。起きた時は混乱しており、自分がどこにいるかわからない。Alumina,
Aesculus, Lycopoiumなどでは、朝起きてキョトンとしている様子を特に子供を見る。そこで 見えるべき通りに見えているのかどうか、自分は家にいるのかどこか他の所にいるのかを確かめるため考えねばならない。
吐き気と嘔吐を伴う頭痛も多い。風邪をひくと必ず頭が痛くなる。これはカタルのせいだろう。 Aluminaの患者は、たいてい粘膜の乾燥に悩まされ続け、鼻は乾燥して詰まる。鼻の乾燥と鼻づまりは特に片側に見られるが、一般的には左である。鼻にはこびりついて乾燥した粘液やかさぶたが詰まり、後鼻腔とローゼンミュラー窩には古い萎縮性の
カタルの固まりが詰まる。鼻全体に大きい緑色の悪臭のするかさぶた(痂疲)がある。以上から頭痛との関連性が推測される。風邪をひく度に、 ベトベトした黄色い分泌物が緩み、水っぽい分泌物に代わり、目の上の額が痛み、痛みは頭全体に広がる。この時
吐き気と 嘔吐を伴う。 慢性のカタルで頭痛がするというのは、このような事である。頭痛は横になると改善する。 嘔吐性頭痛(偏頭痛)と定期的な頭痛がある。AluminaはPsoric(乾癬)体質の老人、つまり衰弱した弱い体質で、瘰癧体質、結核とカタル性疾患の傾向があるようなタイプと一致する事が分かるだろう。
Aluminaのカタルの傾向は顕著である。カタルは粘膜が存在する所にはどこでも見られる。Alumina は皮膚と粘膜、すなわち内外皮膚や体の表面に広範な影響を与える。患者は常に痰を吐き、鼻をかみ、目から分泌液が出ている。今述べたこのカタル状態に付随して視覚障害が多くある。霧やべールを通して見たように視野がぼやける。視野がかすんでぼやける。目の筋肉、眼球の筋肉、毛様筋の筋肉の障害もある。視力が弱く変化しやすい。Aluminaに全体的に見られる麻痺した弱さが 特定の筋肉や特定の筋肉群に見られ、眼鏡の調整が非常に難しい。眼筋の動きに障害がある。
カタルの状態が鼻の後ろまで広がり、後鼻腔はひどい粘液と固まりで詰まり、喉の中を見ると、軟口蓋や 扁桃の粘膜などすべての部分が、ざらざらとし腫れてうっ血し、炎症を起こしているのがわかる。咽頭は乾燥しているように感じられ、慢性的に敏感さと痛みがある。食べ物を呑み込む時、まるで喉に小さな棒が
たくさんあるようにチクチクした感じがある。特に少し休んだ後、湿らせたり呑み込んだりすると改善する。夜風の中で しばらくじっとしていると 糸を引く粘液がたまる。この粘液が慢性的に乾燥した咽頭や胸部に痛みを伴い咽頭まで広がり、短い空咳が出る。同様のカタルが食道まで至ると、食道が敏感でぎこちなくなる。嚥下が困難。食べ物の塊を飲み込むのに努力を要し、下に降りていく間ずっと食べ物の塊を感じる。痛みとギクシャクした感じ、運動麻痺と嚥下困難がある。この麻痺性の衰弱で、患者は呑み込むために少し力を入れなければならず、嚥下で食べ物が下りていく間
食道が敏感であるかのように感じられる。 胃腸や直腸のカタルの状態があるため、柔らかく出にくい便に粘液がたまっている事がよくある。また膀胱や腎臓や尿道にもカタル状態があり、古い淋病が長引きカタル性や後淋(慢性的淋病)の分泌物が出るようになる。後淋(慢性的淋病)でなくても分泌物が何ヶ月も続き、薄い乳白色の分泌の代わりに、淋病が非常に長引いた多くの場合に見られるような黄色の無痛の分泌物が見られる事もある。膣に関しても同様である。膣からの粘液の分泌は、
べとついた黄白色の分泌物で、皮を剥ぐようにヒリヒリと痛い事がある。このようなひどいカタル性の状態がAluminaの体質の一部である。
皮膚に関してもよく似た疾患の状態が見られる。Aluminaはあらゆる種類の発疹になりやすい。皮膚はしなびて乾燥し、発疹や肥厚、硬化、潰瘍、ひび割れ、出血を起こしやすい。発疹はベッドの暖かさで悪化する。
発疹がなくても、ベッドの中が暖かくなると皮膚は痒くなり、皮膚から出血するまで掻く。これは、発疹に関して考察すべき事を示している。患者はかさぶたで覆われてやって来て、こう言う;「夜暖かくなると掻かずにいられず、出血するまで掻くのだ」と。さてAluminaにおいては、掻いてかさぶたが出来たのか、あるいは痒みのある発疹ができてそうなったのかを調べる事が非常に重要である。というのは Aluminaは発疹がないのに肌がはがれるまで掻き、かさぶたになるからだ。 Aluminaは発疹にではなく、発疹を伴わない皮膚の痒みに処方せねばならない。Mezereum, Arsenicum, Dolichosと Aluminaは皮膚が痒く、出血するまで掻くと楽になる。もちろん掻いた後に出来たかさぶたによる一見 発疹のようなものはある。治癒が始まるとすぐ痒みが始まり、皮膚の皮が剥けると楽になる。出血と皮膚の湿り気で、痒みが楽になる。さて、発疹を伴わない痒みと発疹を伴う痒みを区別していない本があるので、若い医者の多くが 皮膚の痒みが常に発疹とつながらねばならないと思っており、発疹の種類の理解において間違える。皮膚が分厚く硬く潰瘍があり、その潰瘍の下が硬くなる。硬化する傾向を伴った粘膜と皮膚双方は非常に反応が鈍い。至る所で粘膜の分厚さが見られる;厚くなった部分は 小さな潰瘍になり、潰瘍の基底部が硬化する。同様の事が皮膚にも当てはまる。乾燥と灼熱感は全てに見られ、全粘膜と皮膚には乾燥と灼熱感があると話される事だろう。
慢性顆粒状まぶた。瞼を裏返すと粘膜が厚くなっている。この肥厚や肥大で、眼瞼外反症 のように瞼が外側にひっくり返る事もある。「まつ毛が抜ける」事は一般的な状態として見られる。全身の毛が抜ける。部分剥げ;頭毛が広範囲に抜ける。耳の中で耳鳴りなど色々な音がする、聴覚障害; 膿性耳漏。
「鼻の先がポキポキ鳴る」はAluminaに見られる。そこここが硬化するため、腫れと発疹になりやすい人におけるルーパスや上皮腫(エピテリオーマ)には有利に作用する。AluminaとAlumenは、Ars.,
Lach., Sulph. やConiumのように、このような問題に関して使われる薬である。浸潤がある所を見事に治した事がある。顔や体の他の部分の皮膚に這うような痒みがある。この痒みは温かくなると(温められると)起こる。張った感じがある。顔や服に覆われていない他の部分に奇妙な感じがある。顔に乾いた卵白の感覚があったり、顔に乾いた血液やクモの巣を感じる。クモの巣がある所を通り、顔にクモの巣がかかった事があればこの感じがわかるだろう。クモの巣を取り払うまで
そのまま放っておけない。この感覚は特にAlumina, Borax, Bar. c.に見られる。皮膚の中を小さい物が這ってムズムズする。顔が痒い。このような症状は非常に刺激性があるので、患者は座ってずっと顔を掻き続ける。
このような人を神経質だと思うことだろう。座って手の甲を掻いている姿は神経質に見える。こういう姿を見た時、手を動かさずにいられないのか、痒みのためなのか調べるべきである。Aluminaは
この顔の痒みのため、何かを払いのけようと顔に手をやる。
喉についてはあまり述べていないようなので次は喉の症状に進もう。「口峡に潰瘍があり、スポンジ状で、黄色っぽい茶色の分泌物、ひどい匂いの膿」。患者は慢性的な喉の痛みをよく患うと言うかもしれない。Aluminaについては、粘膜に限局化する傾向が特にある。Aluminaは粘膜から出血しやすい。
鼻のカタル、眼の赤さ、鼻詰まりがあり、急性の風邪をよくひく;非常に深刻(重度の)な喉の問題がある。すべての穴から分泌物が出る。Aluminaは喉の症状として落ち着く風邪のレメディでも、急性の喉の痛みのためのレメディでもなく、何か月も作用が続く抗ソーラのレメディである。Aluminaは風邪のためのレメデとして大いに役立つ。この点においては、Sil.,
Graph.やSulfurのようである。Aluminaは組織に変化をゆっくり起こす、「slow-acting(ゆっくり作用する)」レメディである。深く根付いたソーラ疾患を伴う患者は、レメディを投与した後は楽に感じられるが、症状が去るまでには何ヶ月もかかる事だろう。患者は「よくなった感じがするが、症状はまだ全てある。だが食も太り、よく寝られるようになった」と言うかもしれない。その時にレメディを変えるのは賢明ではない。Aluminaを投与してすぐに、カタルと背中の痛みと他の症状が楽になると期待する必要はない。何週間もたってから、満足のいく結果を得られるだろう。Plumbumで起こる麻痺性の衰弱にも同様の事が見られるだろう。豊富で充分なプルービングが行われ、レメディとして使えるようになる新しいレメディの症状で、Aluminaの症状と類似しているものがある。それはCurareだ。よりよいプルービングがあったら良かったのだが、Curareの症状は多くの点でAluminaとPlumbumと類似した点が多く、特にピアニストの手指の衰弱においては非常に似ている。年をとった演奏家が、しばらく前から指のスピードが落ちたと言うだろう。伸筋が衰弱する(弱くなる)ようだ。指を持ち上げる事ができない;持ち上げる動きが無くなる。Curareはそれを大いに克服し、指を満ち上げる力を迅速に引き出す。しかしこのレメディには麻痺状態も全般的にに見られる
;Curareは特に屈折よりも伸筋の麻痺状態に関わるが、Aluminaの麻痺は屈筋・伸筋の両方に関連する。
Aluminaは澱粉、特にジャガイモの澱粉から悪化する数少ないレメディの1つだ。ジャガイモを食べて悪化する。消化不良、ひどい鼓腸があり、ジャガイモを食べると咳が悪化する。塩、酢、ワイン、胡椒、高アルコール飲料で悪化する。Aluminaは脊柱のレメディで、アルコール飲料で悪化する事は、他の脊柱のレメディと同じである。 それはZincumにも見られる。Zincumの患者は、その人の不調がすべてワインで悪化するため、ワインが飲めない。このレメディは非常に敏感で、少量の酒ですぐ酔ってしまうため、酒をあきらめざるを得ない。酒で酔うだけでなく、不調が悪化する。
さて、Aluminaで実質的に消化が止まる。胃のカタル、胃潰瘍、シンプルな食物からでも消化不良になりやすい。酢っぱいもので苦いおくびが出る。
食べ物や粘液や胆汁を吐く。吐き気、目まい、胸焼け、ひどい鼓脹。粘液と水を吐く。胃はガスで膨らむ。肝臓は非常に病んでいる。両方の季肋部はこの上なく苦しく、特に右側の季肋部がひどい。
Alumenを復習すると、特に鉛の解毒に関して思い出す。このレメディも鉛の毒効果と鉛への過敏性を克服するだろう。鉛の鉱夫たち、絵描きや芸術家たちの疝痛と麻痺性衰弱、鉛を含んだ洗髪剤の使用で鉛に敏感になり麻痺を起こした人たち。それほど前でないが、鉛の酢酸塩が女性の帯下によく使われていたが、多くの女性が
それに過敏反応が出て中止になった。Aluminaはそのような過敏な状態から来た疾患に、最も秀でた解毒剤である。
Aluminaには便や直腸に関する一般的状態があまりにも多く、特有な症状としてはいくつかあるだけである。ご推測のとおり、このレメディは裂肛がある;Aluminaに見られる粘膜や組織がどんなものかを考えると当然予想される事である。患者はひどい便秘で苦しみ、強く力むが、粘膜が厚く膨れているので裂肛が起こる。そのような状態を有機組織に作り出し、裂肛が起こりやすい粘膜ができる場合、Aluminaがケースに適合するなら裂肛の治癒まで待つ必要はない。Aluminaが裂肛において何を起こすかはレパートリーを見るまでもない。薬の一般的な知識から、粘膜と皮膚がそのような状態になる人には裂肛が当然見られるので、Aluminaがその患者を当然治癒するはずだという事が分かるだろう。皮膚が硬く潰瘍化し、不格好で不健康になり、便秘になれば、薬(レメディ)について学んだならAluminaが裂肛を治癒しても諸君は驚かないだろう。また他にどんなレメディがこのような有機組織の状態を呈するかを考察する事で、どんな裂肛を治癒するかも分かる。Nitric acid, CausticumやGraphitesの本質的な部分を調べれば、なぜこれらが裂肛を治癒してきたのかも分かるだろう。マテリア・メディカはこうして学ぶのだ;レメディがその人自身と、内臓と組織にどう働くのかを調べなさい。
「頻繁な排尿」「排便中に尿が出る、或は力まずには排尿できない」。これは高得点の症状、特異な症状で、最も際立った症状と呼べるだろう。膀胱を空にするため、排便で力まねばならない。「尿はヒリヒリ痛み、
腐食している」「膀胱と生殖器に衰弱感がある」「腫脹と尿道からの明るい黄色の膿の分泌物」「尿分泌に伴う灼熱感」。
男性生殖器の症状は、衰弱、インポテンツ(性交不能)、夜の射精で特徴化される;生殖器を酷使したり使い過ぎたりして役に立たなくなった時に適合する。前立腺の膨張と肥大化、前立腺の様々な問題(障害)あり、会陰に充満感を伴う。性交後、前立腺のあたりに不快感と苦痛がある。射精時、または射精後の不調。性欲が減退し、全く無くなる時もある。
麻痺性衰弱または生殖器の不全麻痺; レメディ全体に沿った状態。「排便が困難な時、前立腺液の分泌がある」「夜間の痛い勃起」。
女性はこのレメディで治癒できる多くの問題があるが、その大半はカタルの問題である。この一例に帯下がある ;多量で刺激性があり皮膚がヒリヒリさせるような黄色い帯下;帯下は股をたれ落ちるほど多く、帯下が触れた部分は赤く、炎症が起こる。穴(os)の周りの潰瘍。粘膜が弱く、開き、潰瘍になりやすい。全ての部分が衰弱状態にある。弛緩した間膜から引き落ちる感じがある。重力感;骨盤内臓器が重く感じられる。分泌物は概して濃く黄色いが、糸状で卵白のように見える場合もあり、多量でつんと鼻をつく;「半透明の粘液」「帯下は腐食し多量;かかとまで落ちる」。この症状は一般的に、歩行中や立っている時に悪化するため、日中に最も気づきやすく、実際重要な症状ではなくて、よくある状態である。生理後、ほぼ次の生理までその女性はまっすぐ立てない。 筋肉全てが弱い;筋肉組織の緊張力が欠如しているようだ。40歳ぐらいの閉経に近づいた女性にとてもよく合う;生理期間に衰弱し、出血は乏しいが衰弱する;苦しみがひどく、生理期間中の患者は憐れである。生理後、心身共に疲労困憊する事がAluminaの大きな特徴である。淋病を一時的に緩和したために淋病が長引いている場合もまたAluminaが適する。この患者は部分的に適合するレメディで心地よくはされていたが、再発し続けるので、問題を根こそぎにするほど十分深いレメディではなかったようだ。再発し続ける分泌物においては、Pulsatillaやら何やらでしばらくの間よくなり、具合が悪いというより淋病だからという理由で特にThujaさえ与えられた。患者が疲れ、精根尽き、患者全体を調べ不全麻痺の状態と、レメディで緩和されていた分泌物の継続的な再発があれば、男女共にAluminaを考える。
分泌は男性には無痛の物である。淋病の分泌が長く、止まったり出たりするが、それまでの時点で痛みのないわずかな分泌物が残っている。Aluminaはこういった古い淋病のケースを治癒してきた。穏やかならぬ慢性カタル。粘膜がそここでうっ血し
衰弱している。
妊婦にもいくつか問題がある。普通便秘がない女性が、妊娠中便秘になり、Aluminaの特徴を全て伴う、すなわち直腸が動かず、排出する力もなく、腹筋で押し出さねばならないし、長い時間力まねばならない。また。幼児も同様の力みがある。新生児や生後数ヶ月の赤ん坊がAluminaを必要とする事がある。他に(レメディが)何も見つからない時、Aluminaは幼児の便秘に非常によく使われる;子供は力み、何とかして便を押し出そうとするが、便を調べると柔らかく、簡単に排出すべきような便である。
声枯れや失声、咽頭の麻痺した衰弱がある。これは奇妙な事ではない;衰弱した体質というAluminaの一般的な状態に沿っているだけだ。力のない声で、この人が歌手なら ほんのしばらくの間しか歌う事ができないし、 わずかにしかがんばる事しかできない。すべてが重荷である。声帯が麻痺した状態のため、どんどん声が出なくなっていく。
次に最も特徴的な咳と胸部の問題に進もう。時々咳に痰が伴う事もあるが、乾燥した 短いから咳(痰のない咳)が継続的に出て、何年も長引く。乾いた短いから咳という特徴を示す、特に衰弱を伴う咳ではArg. met.と比較できるが、 Arg. met.は日中 起こり、Aluminaはそうでない。Aluminaの咳は朝起こる。
Aluminaの咳をカバーする症状を挙げよう:「朝起きるとすぐに出る咳」。毎朝、乾いた咳が長い間出る。固く、短いから咳が、息が切れ嘔吐し尿が漏れるまで続く。この症状は女性によく起きる。
「頻繁なくしゃみを伴う、乾いた短いから咳。テキストには「長く垂れ下がった口蓋垂から」と書いてあるが、「長く垂れ下がった様な感じがする口蓋垂から」と読み取るべきだ。喉を何かがくすぐっているような感覚がある;まるで口蓋垂が長く垂れ落ちたように、くすぐったく、口蓋が長過ぎるに違いないと患者は言うだろう。別の表現をすれば「喉の皮がたるんで垂れさがっている様な感覚から咳をする」である。口蓋について知らない者は、喉の中で何かが緩んだように話すだろうし、口蓋垂がある事を知っている者は概して口蓋が垂れ下がっていると表現するだろう。両者同じ事を言っているのだ。咽頭がくすぐったいのである。これは歌手にいつも示される。歌手が麻痺や声の使い過ぎから声が出なくなった時はAluminaを考える。声の調子が下がり弱々しくなり、風邪をひくと、特殊な種類のくすぐったさが始まる。Aluminaはこのような場合非常に役立つ。口蓋垂が垂れ下がった感じがする上述のような状態にAluminaが良いと知られるようになるまでは、初期のホメオパスは声が震えて弱まった歌手や話し手にはArg. met.を使っていた。
忘れるといけないから ここでRhus-t.についても話をしよう。老齢の歌手の多くは、風邪をひいた後、歌い出すと声に弱々しさが残っている事に気が付く。歌い始めは声がハスキーだが、しばらく 歌っていると良くなる。このような患者、プリマドンナ、弁護士、牧師(説教者)など全てにRhusを処方しなさい。彼らは声のウオームアップが必要で、そうする事で良くなるが、「控え室に戻ってしばらく待ち、また歌い始めると以前より悪くなっている」と言う。非常に暑い部屋にいて声を使い続ければ良くなる。これはRhusの 一般的状態に適合する。AluminaとArg.met.の麻痺した声枯れとは、少し違う声枯れがある。私が言う声枯れと同じレベルの声枯れは;声を出し始める時、喉をきれいにして粘液を取り除かねばならず、そうする事でまた声が出るようになる。動き始めの声帯は粘膜で覆われているので その粘膜を取り除くと声帯もよく震えるようになり、粘膜が取り払われ続けられる限り声帯も震える。これはPhosphorusである。こういう場合、声を使うと痛くなる。 声帯は震えると痛くなり、咽頭は触ると痛い。この痛みは非常に顕著で声を出そうとするとナイフで刺されているように感じる事もある。
我々は非常に広く 声枯れを個別化しなければならない。ホメオパシーとは他と識別していく事(discrimination)である。
胸の痛みは 話すと一層ひどくなる。胸部の筋力の衰弱がある。肺に弱った感じがあり、胸の中が弱った感覚がある。震動で胸の苦痛が増す。全体的な事として話してきたが、背中と四肢に関連して次の非常に強い特徴がある。脊椎の灼熱感;背中のひどい痛み。背中の灼熱感と縫うような痛み。患者はこれを以下のように表現するだろう;「背中が痛く、まるで熱いアイロンが脊椎の下の方をぐいぐい押しているようだ」と。粘膜の症状と 背中にも重要な痙攣状態 がある脊髄炎ではAluminaは非常に素晴らしく作用する。脊髄炎においてよく知られているAluminaの症状は 輪状の感覚だ;手足や体のそこここが包帯で締められた感覚がよく起こる。体にコードがしっかり巻き付いているような感覚が、Aluminaの炎症と脊髄炎の最も顕著な特徴的状態である。敏感な部分と脊髄に炎症がある。まるで背骨に熱いアイロンを押し付けられたように感じる 焼ける様な箇所がある。背骨に沿って索状組織に 麻痺性の衰弱を伴う 引き裂かれるような、裂けるような痛みがあり、麻痺は次第にひどくなり、完全に麻痺する;体の片側の麻痺。
「足を踏み出すと足裏が痛み、まるで足裏が柔らかすぎるかのように腫れる」「踏む時、踵がしびれる」「膝が震える」は単なる一般的な弱さである。「座っている時、手足がしびれる」。四肢に圧力がかかるといつもしびれる。弱々しい(血液)循環、貧弱な伝導性、弱い神経反応;すべてが鈍化し遅い。腕と脚が重く感じられる。「関節の圧迫感と共に、骨がぺったんこに押しつぶされたように四肢が痛い」。さて、今まで見て来た事のいくつかを確証するだろうと思われる神経の症状を少し読もう。「身体的被刺激性の欠乏」「体力のひどい消耗、特に外気の中を歩いた後で」「片側の麻痺、特に伸筋」「痛風患者におけるリウマチ性や外傷性の麻痺」。関節に節がある痛風患者;麻痺性の疲労を伴う老人の衰弱した体質。「心身共に興奮状態」。体のそこここが震える。「重病後のように、足取りが遅くよろめく」。
ゆっくり動かなければならず 急げない。「無意識の動き」。
あらゆる種類の夢と睡眠妨害があるので、眠りがひどく妨害され落ち着きがない。すっきりしない眠りで、心臓の鼓動と共に起き上がる。「夢をたくさん見て、よく目が覚める;怖くてビクッとする;ブツ
ブツ言ったり、泣いたりする」「睡眠中、首の筋肉で頭が後方に引っ張られる」;これは麻痺性の衰弱のケースにおいて見られる;首の後ろの筋肉が後方に引っ張られるので、起きざるを得ない。睡眠中の首の後ろが急にグイと引く。
体温の低さ(動物的な体熱の欠乏)と、冷たさはレメディ全体を非常によく貫くのに、患者は外気の中にいたがる;充分着込んで温かくしなければならないのに、外気の中にいたがる。患者はあらゆる変化やすきま風で、絶えず風邪をひいている。 患者はひどく冷たいベッドに入る事もあり、ベッドが暖かくなると痒くてたまらなくなり、布団の暖かさは快適な物でなくなる。両方の極端さが同時に見られる。四肢全体と手の甲の循環が非常に悪いので、寒い天候下では冷たいままの手が 出血したひび割れや裂け目だらけになる。
すねの骨に沿った皮膚は、キメが粗くぼろぼろで痒い。Aluminaは乾燥した気候、乾燥して冷たい気候で、症状が増え、湿気た気候で改善する事があると言われる。
このレメディの弱々しい状態は全く顕著なものではない。それほど寒気もないしそれほど熱もないが、活気がなく、ゆっくりで鈍く、慢性的な要素と慢性的な症状が最も顕著に現れる。衰弱し精根尽きた症例では、寝汗や朝方にかけた発汗がある。朝方軽く寒気がする。喉の渇きを伴う寒気。
このレメディの強い特徴は慢性化した皮膚の乾燥である。発汗は滅多になく少量。多量で消耗性の発汗にはAluminaは特に適さない。多量に汗をかくCalcareaとは全く反対であり、このレメディは背骨と麻痺性の疾患を伴い、労作で疲れ非常に疲労困憊するが汗をかかない。Aluminaに汗をかかせようとたくさん重ね着させても、ただ暑くなり痒くなるだけで
汗をかかない。少量の汗。汗をかく事ができない。ひびを伴う慢性の皮膚乾燥。皮膚は乾燥からぼろぼろになり、ひび割れ、亀裂が入る。 手の甲の皮膚はひどく乾燥して分厚くなり、寒さで手が冷たくなり変色する。
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